書かせていただく気持ち

ヱスケーが何か書きます

30歳の自由研究 シロシビンズ『無意識ノイズ』について(逆襲のインタビュー)

30歳の夏休み、このアルバムをテーマに自由研究を行いました。

 

2018 アルカロイド・レーベル

シロシビンズ

『無意識ノイズ』

(ジャンルはエレクトロとの表記だがNew Waveが正式)

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02:38 01. エカシ・オンカミ
03:50 02. EVOLさん
02:50 03. PITFALL HUMAN LIFE
03:24 04. フェノミナップ
04:13 05. ラッキーストライクミーンズファインタバコ
02:54 06. POINT STONE
07:32 07. いただきをめざして
04:32 08. LAST YOUR HERE
03:27 09. キュートパンク
04:30 10. 無意識ノイズ
04:10 11. みかたのてきのみかた
06:48 12. ネロリの丘
 

Spotify

▶︎無意識ノイズ by シロシビンズ on Spotify

Apple MUSIC 

▶︎https://itunes.apple.com/jp/album/%E7%84%A1%E6%84%8F%E8%AD%98%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%82%BA/1425371457?app=music

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※リンクは最後にも掲載しています

 

僕の友人であり師匠(と思っている)シロシビンズという男が久しぶりに音楽活動を再開し製作したアルバム『無意識ノイズ』がめちゃくちゃに良かったので勝手に自由研究を行いその成果をインタビューという形で本人にぶつけました。

 

忙しい人のための4行

・全曲通してほぼ即興で録音された歌(=無意識)。音=振動=ノイズ

・耳に馴染みの良いサウンド

・様々なジャンルを往来する独自の路線

・約51分で¥900+FREE DLの 無意識ノイズ特典Ver「アウトオブ無意識ノイズ」

 

ダイジェスト 

 

制作背景と今後

フィンガースティック奏法(正式にはファンクフィンガーズ奏法)を取り入れたことを明かしている

 

 アルバム配信前楽曲『水神の村」

 

 

今回は全曲に(シロシビンズの楽曲としては珍しく)歌が入っている(ほぼ全て即興で録音)ということで歌詞から読み解いていくのがわかり易いと思い、まずは歌詞を文字起こしすることに。意図的に聞こえにくくしている部分はあるが聞き取れる箇所を書き留めサウンドとともに理解を試みる。

 

一聴するだけで「こういう曲」だと言い切れない部分があり、

安易に「◯◯っぽい」と形容できない曲が殆ど(これは僕の知識不足もあるんですが…)

そして何度も聴きたくなるサウンドの魅力も相まってシロシビンズのアルバムに没頭していった。聞くたびに少しずつ「こういうことかな」と解明していく楽しさがあった。

そして自分の見解が正しいのか気になり今回インタビューするに至ったというのが経緯

 

インタビューを行うにあたり纏めたレポートの一部 

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-アルバムタイトルについて

 

シロシビンズ(以下 シ) 「無意識ノイズの"ノイズ"っていうのはノイズミュージックのノイズではないんですよ。音楽っていうものは基本的には振動だからね。振動っていうのは、ようはノイズであって、人からしたらポップミュージックだって気に入らなければノイズになるわけでしょ?」

 

「そう考えると音楽っていうのは"ノイズ"なんじゃないかってこと」

 

独特な髪型で現れたシロシビンズ

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-順を追って曲解説

 

1. エカシ・オンカミ 

 

ヱスケー(以下 ヱ)「まずは『エカシ・オンカミ』だね。アイヌ語でekasi(=長老) onkami(=拝む)という意味なんだけど、なぜアイヌ語を使ったの?」 

 

「これはね、まず僕が北海道のミュージシャンであるという意識が最初に出たの。」

 

「北海道のミュージシャンで"アイヌ的なアプローチ"ってあんまり聞いたことがなくて、やっているとすればアイヌにすごく接近している人。それを考えると「おかしくね?」って思ったの。日本固有の民族が、なんで北海道の地でアイヌという民族が居ながら着目されてないのか。おかしいんじゃないか?って思って、俺たちの居る土地はアイヌの地で、北海道で活動しているミュージシャンなんだぞっていうのを打ち出したかったんだよね。動機はそこです」

 

「長老が拝んでいるというタイトルだけどこれについては?」 

 

「最後の"エトピリカは飛ぶ カンナカムイ気にせず"というくだりで、風よ穏やかにあれっていうのを祈っているっていうことだよね」

 

「あと雨のSEから始まるけど、もしかしたら雨乞いを拝んでるのかもしれないし」

 

「この雨音を録ったのは偶然なんだよね」 

 

「これは偶然。でも偶然を含めて繋がったんですよ」

 

「ただ最初のイントロは完全に別の意識で作った。びっくりさせようと、「こういうものだよ」って「変なものですよ!」っていう先制攻撃」

 

「ダイジェストっぽいけど違うんだよねこのイントロ。アウトテイクも混ぜられてる」 

 

「アウトテイクは2曲入ってる。結果的に曲にならなかった素材も入ってるんだけど、後は未発表曲とかそういうのも入ってる。ダイジェストというよりはサウンドコラージュのイメージで作ったものだね。断片が流れだしてから始まる。そのくらいかな」

 

イントロ用に短い曲を作ったのかと思ったがアウトテイクでしっかりとした曲(3~4分)のストックが10曲ほどあるという

 

 

2. EVOLさん

 
(一部歌詞)
恋は盲目
愛は激烈
 
そんなことでも幸せさ
連絡ないとハラハラ
笑顔がないと気になる
知らないうちに落ちている罠
 
嬉しいことなどない
お金もだんだん出て行く
ストレスだってたまにたまる
 
辞書には載っていない(THIS is LOVE) この心のざわめき
辞書には載っていない(THIS is LOVE) この心のときめき 

 

「このタイトルはSONIC YOUTHのアルバムから?」 

 

「タイトルつけて、後から気付いたの。「SONIC YOUTHのアルバムと同じじゃん!」ってだから『さん』をつけた。単純にLOVEの逆です」

 

「ひねた人間だから恋の歌って作ったことないなって思ったの。少ないとはいえ恋愛はしてきたわけで、そのくらいの自分が恋愛ソングを作ったらどうなるの?っていうことなのね。恥ずかしげもなく言うけど そういうことです」

 

「相手好きな時って今考えたら「どうかしてた」って時ない?」

 

「うん。よく言われることではあるね(よくわかってない)」

 

「なんでわざわざこんなことしたんだろう!?って、そういうことだよね"恋は盲目" で、"愛は激烈"。覚醒剤やってる男を支える女の人もいるわけじゃない。激烈だよね

 

"笑顔がないと気になる"なんてすごいよね。今までなら絶対使わなかった。」

 

「うん。」

 

「でもなんかムスッとしてて気になったんだよ。」

 

「で、"知らないうちに落ちている罠"。結局さ、恋愛してるけどドツボじゃね?っていう」

 

"お金もだんだん出て行くストレスだって溜まっただろう"

デートってさ、お金かかるじゃない。これ絶対みんな思ってると思うけど、デートってお金かかるしストレスたまると思うんですよ。お店見つけないといけないし…。」

 

「うんうん。(よくわかってない)」

 

「例えば『ルサンチマン』みたいな言葉もあるんだけど、恋の葛藤みたいなところで、言葉では表せないんだけど落ち着かないなっていうこともたぶん人が好きな時にはあると思うんですよ。そういうことです。ものすごいストレートに書きましたよ」

 

「最後に英語でなんか言ってるでしょ?あれはね、全く関係ないんだけれどウィリアム・バロウズっていう意味わからない小説書く人がいるんだけど、」

 

「ああ、カットアップ の」

 

「そうそう。その人の小説でね、『そしてカバたちはタンクで茹で死に』っていうタイトルがあってそれを言ってます」

 

「実は全く関係のないことを英語で言ってたんだね。そしてカバたちはタンクで茹で死に…笑」

 

「恋愛してたらそういうこともあるんじゃない?(適当)」 

 

3. PITTFALL HUMAN LIFE

 

(一部歌詞)

家も建って 妻子だって一緒さ
今までの努力の証さ
だけど孤独の隣には
落とし穴 落とし穴
 
足元 近く イェイ イェイ イェイ
足元 さらう イェイ イェイ イェイ
足元 近く イェイ イェイ イェイ
足元さらう イェイ イェイ イェイ
 
上手くいくときの危険性
 
気づけば 万年この日
子供はあちこち 巣立ち?
家の中 不幸が続き
憂鬱が 憂鬱が
 
家の塗装も禿げて イェイ イェイ イェイ
庭の草木も荒れて
ため息 立場もない
 
昔話も弾まない
 
誰がこんなこと想定したのか?
 
いっときの 
気づかない
足元の落とし穴
落とし穴
落とし穴

 

「これはね、あんまり言うことがないんですよ。PITTFALL=落とし穴 という意味で人生の落とし穴みたいなことですよ」

 

「明るい曲に暗い歌詞をつけたんだよね」

 

「そうなんですよ。これはDavid Byrne- Like Humans Do が元ネタ。当時この曲がWindows XPにデフォルトで入っていて曲調とかテーマも同じ。冒頭のパーカッションもかなり似てるね。弦セクションもそのインスピレーション」

 

「あの弦楽器の感じはシロシビンズの曲では珍しいなと思ったし効いてるよね」

 

「これを作ったのはアルバムの中で最後の方…最後の最後かな。」

 

「これが最後なんだね。この曲のテーマって以前自虐的に『ヒューマンエラーって言葉があるけど僕はエラーヒューマン』と言っていたのが元なのかと思った」

 

「そんなこと言ってたの?いいこと言うじゃないの」

 

「いいことかはわからないけど…笑

終わりが悲惨な結末を思わせるような音で締めくくるんだよね」

 

「これね、PILの『Don't Ask Me』っていう曲のPVがあるんだけど、最初はすごくいい家を買うんですよ。誰かの家を出払わせて夫婦にその家を買わせるのね。その人はどんどん地中に潜って行っていい生活になる。それに比例してその夫婦は倦怠期になってどんどん暗い家庭になって行くってPVでそれもイメージの中にあったかな。」

 

「これも即興で録ってるの?」

 

「これは軽く固めてからだね」

 

「だんだん不幸になっていく様を描いたと」

 

「そう。いいことなんてそんなに続かないじゃないですか。仏教でも言うんですけど、"一切皆苦"って。これは何かって言うと、貧乏で何かが買えない。人生が苦しいっていうのはお金がなくてこれが買えないとか細やかなことでも"皆苦"だから人生は一切皆苦。だから仏教の教えの中で人生は一切苦しいものなのにそれを幸せを前提に考えていること自体おかしいんじゃないの?ってこと」

 

「だから一戸建て持って妻子持って幸せだけどそれはその場だけの幸せであって結果的にどうなるわけでもない」

 

「それはたしかにそうかも」

 

「一曲目でアイヌから始まり二曲目で愛の話になり三曲目で仏教の教えが入ってきてますね」

 

「すごいね笑」

 

4. フェノミナップ

 

(一部歌詞)

睡眠過多
睡眠過多
 
起き抜け
その後の疲れ
吹き飛ぶ
吹き飛ばす
吹き飛ぶ
吹き飛ばない
 
眠いような眠くないような
ねむい…ねれる?
 
(ラテン語で眠れない)
 
半寝ぼけ
徹夜明け
寝たような
寝れなかったような
二日過ぎたような
1日も経っていないような
(睡眠過多)
とにかく辛い
肩が重い
頭がはっきりしない
これ寝れた?
これ寝れてる?
なんだ…
よくわからないな
寝たのかなあ
寝れてないのかもしれないなあ
 

「バラしますけどこれはZAZEN BOYSの『Take Off』って曲」

 

「で、ナップっていうのはパワーナップ っていう言葉があるんですよ。前のアルバムで一曲そういう曲があったんだけど、カフェインを摂取して効いてくる40~50分後の前に寝るの。そして起きるとカフェインの効果+睡眠による疲労回復で作業効率が上がるっていう一つの睡眠活用法みたいなことらしいんですよ。」

 

「それ何回かやったことがあって上手くいったこともあったので、『ナップ』っていうのは自分の中でパワーナップの意味』

 

「ビートのヒントはZAZEN BOYSだったけどタイトルのヒントはYMOの『ラップ現象』からきていた」

 

「そうなんです。最初のタイトルは『ナップ現象』だった」

 

「前の曲との繋ぎがねガチャガチャッとチャンネルを切り替えるような…」

 

「スタジオのチャンネルのスイッチングだよね。それでエンジニアが揉めてる…みたいな。」

 

「それでコンテニューという言葉で繋がる」

 

「この"コンテニュー”にも元ネタがあるんです。ロバート・フリップ っていうね、キング・クリムゾン のギタリストがいるんですよ。ロバート・フリップのソロで、ある曲が終わった後に違う人の声で「STOP!」って言って終わるの」

 

「かっこいいね」

 

「それでテープの逆再生の音が入って、その後低い声で少し笑った感じで「コンテニュー」って言うんですよ。それが元ネタ」

 

「そこに元ネタがあるんだね。細かいな〜!」

 

「これも即興で歌ってる?」

 

「そうだね。途中のナルコレプシー って言ってるところがあって、ナルコレプシーって言うのは睡眠病でいきなり寝ちゃう病気。気絶に近いんだけど、脳の「起きろ」って信号が出なくなってバタンって。僕の好きな人で中島らもって人がいるんだけどラーメン食ってる途中に寝ちゃってどんぶりに頭突っ込んじゃったって話があるの。そういう病気」

 

「一時期これに近い状況があったんですよ。社会人になりたての時にいくらちゃんと寝ても気絶みたいに眠っちゃう。飲み会で「なんで寝てた?」と怒られる。なんでかわからないんだよ」

 

「急にスイッチが切れちゃうんだなあ。『寝れてないのかもしれないなあ』ってどっちかわからないまま終わるんだよね」

 

「これはビートができて「こういうのを歌いたい」と思って録音したんじゃなくて、いざ音を聞いて歌い出したらこうなったということなんだよね?」

 

「そうだと思う。たぶん寝起きっぽい声が録りたくて、舌足らずな感じで。だからちょっと演技っぽいんだけど」

 

 

5. ラッキーストライクミーンズファインタバコ

 

「アルバムの節々で耳にするこの冒頭の声?はなんて言ってるの?」

 

「これは声じゃないんですよ。確かラジカセの音だったかな。それを加工してる。

「マジかーーー」の後聞き取れない言葉があると思うんだけど、

それはラッキーストライクミーンズファインタバコと言った後に「ラッキーストライクはとても良いタバコなんですよ」って言葉が続いてるの。説明したってことですね」

 

「これって声じゃなかったのか何度も耳にしたから何かの暗号かと思った。」

 

「この曲は一番最初に聞かせてもらったんだよね。その時のものから手は加えられてる?」

 

「加わってます絶対に。「マジかーー」とか入ってないです。これはね、元々タバコ屋に行って録音したものを編集したってだけなんですよ。この後に入ってる曲はこれをなんとか軌道修正しないといけないと思って作っただけなんですよ」

 

 ヱ   

 

「途中に入っている

"このような不誠実があると、打撲、骨折、捻挫、
最悪の場合、即死…とかあります。これね"
というアナウンスはどういう意図があっていれたの?」
 
「航空アナウンスの動画を見ていて機内アナウンスでさ、「緊急着陸時のご案内です」みたいなのあるじゃん。それの真似」
 
「この後の展開がめちゃくちゃかっこいいんだよね。この後に古舘伊知郎的な実況が入っていると…これは何を実況しているの?」
 
「これは一発録りなんですよ。たぶんレースなんですよ。でね、金色の旗を持った選手が出てくるかからみんな旗を持ってるんだと思う」
 
「旗… 」
 
「一人頭抜けてるなって思うんだけど、後からまた抜いてきたなっていう。名勝負だなと思いながらアナウンサーが熱中してて結果的に発作を起こして倒れちゃう」
 
「『ラッキーストライクミーンズファインタバコ』というタイトルはそれを吸っているわけではなくて単にキャッチコピーが面白かったってこと?」
 
DEVOっていうNew WaveバンドのLIVE盤でタバコ配ってるところがあって、「ラッキーストライク」って言って放り投げるの。メンバーの一人は「ラッキーストライク!L.S./M.F.T.」って言ってて何だろうL.S./M.F.T.って…と思って調べたらこれが出てきたんですよ」
 
 
6. POINT STONE
 
(一部歌詞)
特殊なフィルターで見るいつもの部屋
キャンセルされた生活感、まるでラボのよう
 
『鈍色の石球をクリアテーブルに置く
まるで最初からそこに存在してたかのように
置く その間のまんま
置く 優しく置く
 
 
「これはね石を置いてみただけって曲なんですよ。イメージとしては白い綺麗な部屋にクリアのテーブルがあって器の上にオブジェの砂利みたいなのが敷いてあるやつあるじゃない。その上に石を置く感じ」
 
"まるで最初からそこに存在してたかのように置く”っていうのはそこがポイントだったんじゃないかってこと
 
「最後タイピングの音が入ってきて途中でブツッと切れるじゃない。これは書き終えないままの死を意味してるのかなと思ったんだけど」
 
「これを最後の曲にしようと思ってたので、一曲目の最初にイントロで始まったから最後はタイピングで終了という意味にした。次の曲がノイズから始まるから次に移動するって意味でも使えるかなと」
 
「最初聞いた時シロシビンズっぽくない曲だな〜と思ったんだよねこの曲」
 
「この曲は元ネタがあって平沢進 の『呼んでるベル』なんです。ギターはロバート・フリップ の真似」
 
"キャンセルされた生活感、まるでラボのよう"ってところは俺が前にシロシビンズ宅に遊びに行った時に「ラボみたいだ」って言ったのが元になってるのかな」
 
「それはびっくりしたんだよね。衝撃だよ。まさに無意識で…(忘れてた)」
 
「たぶんラボって言葉が好きなんだよ」
 
"キャンセルされた生活感"ってすごい言葉だよね」
 
「別にさ、ショールームって言ってもいいわけじゃない。ショールームでいいのになんでキャンセルされた生活感って…今になるとそう思うんだけどまた意味が違ってくるんだよね。言葉って不思議だよね」
 
 
7. いただきをめざして
 
(一部歌詞)
同時多発的決定
手段も選ぶ時間もない
即決で決められた
強引な採決にのっとって
見知らぬ鳥の群れが行く
集団でどこかへ飛んで行った
彼らには自由がある
僕らには糧しかないんだ (残されたのは少ない糧しかない)
昨日も明日も明後日も
 
"最近はどうだい?
こっちは元気でやれてます
体を壊さないようにお願いします
食べ物、水、必要なものは
すべて そちらに送りましたから"
 
ここは黄昏の国
すべての仕度は整った
夢じゃないさ
本当のことさ
奇跡でもなんでもない
それができるのさ僕らは
 
シェルパを信じて
この断崖を登る
 
断崖絶壁を登る
何も言わず黙々と登る
彼は「付いて来い」と言った
僕は黙ってついていく
僕は黙ってついていく
断崖絶壁を登る
 
いただきをめざして
 
抱かれるような
この太陽   "見よ"
 
「タイトルの雰囲気とイントロからRPGを連想したんですよ。でもいざ始まってみると現実的な内容に感じた」
 
「あ〜…これはね、山登りです。シェルパ が出てくるので。登山家の人は絶対知ってる言葉」
 
"同時多発的決定 手段も選ぶ時間もない "印象的な言葉から始まるよね」
 
「これはソ連のイメージ。ディストピアユートピアの反対で管理社会ってこと。その後に続く"即決で決められた強引な採決 "というのは国が勝手に決めたルールでしょ?で、鳥は飛べる、でも自分には自由がないな…そういう人も居たんだろうなって」
 
シェルパという言葉が出てきた時点で決まったんですよこの曲が。でなきゃ『いただきをめざして』って言ってないんですよ。なぜなら山登りだから」
 
シェルパという言葉が聞き取れなくて話が繋がらなかったんだけどこれで繋がったよ」
 
「エベレストを登るって普通の登山じゃないわけじゃない。こんなの地獄渡って行くようなもんだぞっていうところに行くわけでしょ?冒険っていうレベルを超えていて死と隣り合わせじゃない。「このままだったら帰ってこれませんよ。餓死するまでこのままですよ」みたいな」
 
「この歌詞はさすがに書いたんじゃない?」
 
「書いてません」
 
「すごいなあ。これはすごい。即興で録るときって一発録り? 例えばビートを流して歌うじゃない。一度歌ってみて良かったフレーズを残してそれを何回か繰り返して歌詞を作っていくのか」
 
「言いまわしを録り直すことはあるけど基本的には変えない」
 
「変えないんだ…出たものをそのまま使ったほうが面白いってことか」
 
「うん。後で気になるってことがなかったんだよね」
 
「ラッパーの人で即興で録るっていうのは聞いたことあるけど…」
 
「ビートに合わせて歌うとビートを意識するから歌がノってくるんじゃないかなって思いで録ったんだよね」
 
「それこそ無意識の部分…言いたいことを意識するよりも良いものが出てくるんじゃないかという」
 
「今までね、録るときにメロディを無理やり頭でひねり出そうっていう録音の仕方をしてたんだ。例えばギターのフレーズがあったらギターのフレーズを意識しないで歌おうと思うんだけどやっぱギターに引っ張られてつまらないってことが多かったんだけど、今回そういうことを一切考えないでやったら出来たんですよ。」
 
「即興で録る前に始まりや着地はイメージしたりする?」
 
「ワンシーンが頭に浮かぶことってない?空想でも映画でも。それ。それが単純に言葉になってる。後は妄想とか空想が好きなので…漫画も描いてるし、そういうことでオリジナルの漫画じゃないけどそういうワンシーンが浮かんで『シェルパが山登りか…』って感じで出てきた」
 
「聞く人によって捉え方が変わってきそうな歌詞だよね」
 
「とにかくね、意味を決定させないようにしたの。投げっぱなしなの」
 
「深読みできるところが多いんだよね。勝手に想像して、捉え方は任せますよと」
 
「その方がエンターテインメントとして成立すると思ったんだよ。政治的意図で音楽やってるわけじゃないし。そうしたときに「なんで日本語の歌詞なの?」ってなって、今まで全く意味のない造語とか使ってたんだけど今回は日本語にしたの。日本語にしたのは無意識に歌ったら日本語だったからなんだけど、でも結果的に何か伝わるんだとしたらそれは相手の『無意識』」
 
「相手の無意識に作用してるんだ」
 
「無意識っていうのは自分にもあるけど相手にもあること」
 
「人の考えてることってみんな違うから自分の思ってることが相手にそのまま伝わることって絶対ないじゃない。でもそれが湾曲して伝わったりしてマスメディアが事実じゃないネットの噂をニュースで流すようなことも最近あるよね。でもね、それが良い方向に行くと面白かったりするんですよ。」
 
「俺は誰かがわかってくれるかなと思って気持ちの断片を書いてるから自由に捉えてくださいって書き方はしたことないなあ」
 
YMOピュアジャムって曲があってイントロが印象的なディレイがかかってるんだけど、英語で『こんな不細工なジャムトースト見たことない』って言ってるんですよ。何でかと言ったら当時スタジオの下の喫茶店で注文したジャムトーストがあんまりにもでっかいトーストにジャム塗ってるだけで不細工な形だったんだって。だから『こんな不細工なジャムトースト見たことない』って歌詞なの。だけど外国でインタビュー受けたときに「これは深い意味があるんですか?」って聞かれたの」
 
「本人にしかわからないムカついたことを書いたら深読みされたんだ。考える余地を残しとくといいのかもなあ。そういうところが美しい
 
「その人が決め込んでることを言っても説教臭いと思うんだよ。あんまりそれはやりたくないよね」
 
 
8. LAST YOURE HERE
 
(一部歌詞)
便利で病気になり
みんなの飛行機
旅行先でいそしむ
糸を編む仕事
 
サイクリングの帰路に
裁判の仕事
もう一度尋ねる
あなたのメチルを
 
「タイトルも内容も一番意味ないんだよ。昔に作った曲を作り直したってだけ」
 
「バンド時代に作った曲なんだよね」
 
「2011年頃にはもうライブでやってた。その前にはもう曲は作ってたからたぶん10年前に作った曲。作り直したっていうか初めて音源にした。そしたらこうなった。歌詞はライブで言ってた部分もあると思う」
 
「この中で気になった歌詞があって、"便利で病気になり"ってところなんだけど」
 
「ここは思い付いて自分でも気に入ってる。思ってたのは健康サプリあるじゃない。ああいうことなんだよ。サントリーのセサミンとかさ。あれで「毎日スッキリ!」とか言ってるじゃない。覚せい剤と何が違うんだよって」
 
「「毎日スッキリして疲れがなくて…これがないと不安で…」それ薬物依存症じゃん」
 
「たしかに変わらないね」
 
「だから"便利で病気"じゃん」
 
「不便な方がかっこいいし…」
 
「っていうかね、不便な方が人間は考えるんだよ。だからラジカセ使ったんだもん」
 
「便利になる一方でダサくなってるって意味なのかと思った」
 
「いろんな意味を含んでるけど、とにかく今の人はみんな"便利で病気"になってると思う。コレがないとアレがないと…って言ってるけどそれが無いと本当に終わるのか?そんなわけないでしょ」
 
「後は裁判の仕事…?って部分の歌詞。サイクリングの帰路に裁判の仕事?」
 
"サイクリングの帰路に裁判の仕事もう一度尋ねるあなたのメチルを"
 
「面白い歌詞だなあ笑 このメチルっていうのは?」
 
「たぶんメチルアルコールのことだと思う。一応調べたけど、あんまり意味は無い。けどなんとなく浮かんだから…」
 
「俺もこういう言葉あるんじゃないか?って歌詞を書いて後から調べたら意味になってたっていうことは結構ある」
 
「後半転調した後の歌詞は?」
 
「わざと聞こえにくくしてるんだけどライブで言っていた歌詞もあると思う。”カルトの背表紙"って言葉は入ってる。とにかく最後の『ヒィーアッ』を迫らせたかった」
 
「カルトの背表紙…」
 
「ベースが一番気に入ってるのはこの曲。早くなってからのベースが気に入ってる」
 
「曲を聞いていてこういうベースラインを弾くんだーってところが結構あったんだよね。ベースラインっていじりたくても結局通してループになっちゃう」
 
「打ち込みだとモノモードでやるとベースは面白い。単音でしか鳴らないから鍵盤一箇所押しっぱなしでそれに合うフレーズを弾くと面白いメロディになるよ」
 
 
9. キュートパンク
(一部歌詞)
 
C!U!T!E!
C!U!T!E!
C!U!T!E!
C!U!T!E!
 
 
ハリネズミのように
スナネズミのように その他(etc)
 
見てくださいこの毛並み
見て下さい機敏な動き
不肖 私 ナッツには弱く
貰ってすぐ食べちゃいます
不肖 私 ナッツには弱く
すぐ秘密の場所に隠します
 
丸まったり
ジャンプしたり
特殊な嗅覚を使って
捜索、よく言えばパトロールなんて
捜索、よく言えばパトロールなんて
お茶の子さいさい
なんだってできるよ
 
ハムスター
 
ハムスター
 
みんな”キュート丸出し”でトコトコ
ご飯は何処かと部屋駆け回る
 
不可思議な変化
何千年も前から
多少 今と違うとして
哺乳項の維持
 
ちんまりしてキュートだよ
 
カモノハシのように
ビスカッチャのように
 
森、山、険しい自然に帰ろう
二度と捕まらないように帰ろう
 
「またいきなり雰囲気が変わりますね。冒頭のタブラからの展開が意外だった。この曲はシロシビンズの愛するげっ歯類の可愛さを歌っているけど最後に"森、山、険しい自然に帰ろう" と自由を求める、何か思わせる歌詞が出てくるね」
 
 「ブリーダーとか自分の飼ってるデグーもかわいいけどさ、お嫁さんとか作ってあげられないわけでしょ?そう考えると人間のエゴでしょ。全部愛してあげられているかといったらエゴで愛してあげられない部分もある。そう考えると『かわいい動物の視点で』"二度と捕まらないように帰ろう" 自分に置き換えればそう思う」
 
 「げっ歯類は砂とかに餌を隠すんですよ。あとチラシとか、隠せてなくても隠せてるフリをしてる、というか隠したと思っちゃうんですよ」
 
「隠せた顔をして…そこがまたかわいいんだね」
 
 「歌詞の最後に出てくる『ビスカッチャ』っていうのはね、ペルーのマチュピチュとかにいるデグーとかチンチラの間のウサギに似てるんだけどウサギじゃない。げっ歯類でいつも眠たい顔してるんですよ。寝てないんだけど。でも寝てたりもする。かわいいよ」
 
 「これはわかりやすいですよ。自分の好きなものだから単純だよね」
 

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10. 無意識ノイズ
 (一部歌詞)
 
浮遊する街角で
生成された水が降る
 
発行されない未来
 
当然来る
壮絶に来る未来
 
キャンドルは消える
空気を失って
鋼鉄の都市をいく
走り去る記憶
 
無意識の庭
無意識の公園
無意識の影
無意識の君
 
「この曲が実は一番わかりにくかったです」
 
 「声いじってるしね」
 
 "当然くる壮絶に来る未来"これね、ピストルズの曲で、『no future no future no future for youってね『未来なんてないぞお前ら』って曲があるんだよね。MOSTってパンクバンドがいて、女の人がボーカルなんだけど『ノーフューチャーなんて嘘っぱち、未来は嫌でも必ずやってくるって そこから演奏がバンッと激しくなるんだけど、マジでそうだなと思って。未来は嫌でも必ずやってくる。」
 
 
 「別のタイトルでもよったんだけどタイトル曲に"なった"んですよ。合うかなって」
 
 
「アルバムのタイトルはこの曲の前から決まっていた?」
 
 「前から決まってた。だからこれを聞いてくれ!ってわけでは全然ないの。だったらもっとちゃんと作ってるし…笑」
 
「自分がこのアルバムの中で全体を通して聞いてみて『無意識ノイズ』ってタイトルをつけるならこれだなという感じだった」
 
 「これはまずシンセありき。オーケストラ(的な音)を入れたのは正解だったね」
 
「うん。こういう感じはシロシビンズの楽曲では珍しいなと思った」
 
「珍しくこうしたのはループだけの曲だったので、オーケストラのボレロってあるじゃない。あれって楽器がどんどん重ねられて壮大になっていくんだけど、それみたいな感じで楽器を入れてちょっとエモーショナルな感じを出したかった」
 
「この歌詞はSFだよね。未来では生成された水を飲んでいる。」
 
「水が…川が流れているという考えがなくて。灰皿から水ができるとかさ、「水って言ったら"あの技術"で灰皿を圧縮して一滴できるんじゃないの?」とかさ、そういう考えかもしれないなと思ったの」
 
「"浮遊する街角で生成された水が降る"
 
「浮遊する街角っていうのはそのまま歌っただけ。そして酸素がないから"キャンドルは消える"
 
「この最後の"無意識の〜"という部分はタイトルを意識してつけたものではないんだね」
 
 「違うと思う。それも無意識だね」
 
 
11. みかたのてきのみかた
(一部歌詞)
 
みかたのてきはみかた
てきのみかたはてき
間延びしたこの空気を打破
考えだけではただの脳内信号
 
ぐらぐらの足を
 
 
「無意識ノイズからラストのネロリの丘に行くと暗すぎるだろうということで作ったんですよ。まだあるぞ!っていうのをちょっと入れたかったんだよね」
 
「この曲は元々ある言葉をもとに作られた?」
 
「みかたのてき"は"みかただったと思う…そういう言葉があって、口タブラじゃないけど早口言葉みたいでしょ?それが面白かったから。後半の早くなる展開は普通に歌ってるように見せて実はコピーペーストだったっていうのをやりたかった」
 
「"考えだけではただの脳内信号"ていうのは思ってるだけじゃ何も解決しないぞってこと。戸川純 の歌で"なんとか現状打破考えてみよう それより行動だろ 行動だよまずは"って歌詞があって本当そうだなあって笑
 
となりの芝生を見てないでお前の芝生を綺麗にしろってことなんだよ。悔しいならやればいい」
 
「インターネットで見がちな光景だよね。”ぐらぐらの足を〜"っていうのは…なんなんだろう」

 

「なんなんだろうね…。パッとメロディが浮かんだんだよ。そのメロディについたのが"ぐらぐらの足を"だったから入れざるを得なくて、他に変えようとも思わなかったからそのまま行った」

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有頂天の曲で『ピノキヲ』って曲があるんですよ。サビがね”だよ かっこいい鼻が伸びちゃうよ”って言ってるんだけど、『だよ』から始まるサビの曲はないだろうってことで作ってるんですよ。」
 
「前の歌詞がかかってるとかでもなく」
 
「かかってないです。いきなり『だよ』。だから”ぐらぐらの足を”もありだろって思ったの。これNHKで歌ってましたからね」
 
 
12. ネロリの丘
 
明かりに照らされる
誰もいないステージの上
乾いた拍手がぱらぱらと断続的に続く
曇り空の中を散歩
曇り空の中を歩く
曇り空の中を散歩
 
不思議な架空の動物図鑑
お気に入りのページに付箋を貼り閉じる
16ページ目と
207ページ目
 
抽象的な事柄にはほぼ無関心
せっかくのお土産も開けずに
 
本の文字の中を散歩
本の中の文字の中で迷う
本の文字の中を散歩
本の中の文字に飛び込む
 
いつの間にか飛び込む
 
あの本に書いてあった
思い出す
記憶が
記憶がある
思い出せる
無意識に眠っている
 
根も葉もない噂
踊らされる民衆の声
続かないものと
移り変わる趣味のそれぞれ
 
曇り空の中を散歩
曇り空の中で笑顔
曇り空の中で散歩
曇り空の中を続く
 
いつか行ったオレンジ畑で
また会おうと約束した
 
守ったのに
ちゃんと守ったのに
守ったのに
ちゃんと守ったのに、一人
 
ひんやりした風が問いかける
初めから知っていなかったの
お前は本当は
一人になりたかったんだろう
 
 
「最後はネロリの丘ですね」
 
「これも元ネタがあってXTCの『The Last Balloonチェンバロで始まって最後にトランペットが入る曲。まあ長さも似てるんだけどそれを聞いて「いい曲だな、こういう曲を作りたいな」と思ったんだけど、最終的に全然違う曲になった」
 
「その曲も寂しい曲なんですよ。」
 
"16ページ目と207ページ目"ってところがあるんだけど最初は"14ページと204ページ"にしていて、なんか嫌だなと思って変えた」
 
「この曲はしっかりと歌詞を聞かせたいんだろうなという意識を感じた。他の曲はボーカルを曇らせたり、むしろ「歌詞を読み解くな」とも感じた」
 
「そうかもしれない」
 
「結果的に複雑な作りになっちゃったんですよ。歌入れが大変だった。最終的に最後で盛り上がっていって、こういう終わりかたになるのは良かったな。ラストっぽくて良かったよね。そういうつもりで作ったわけではないんだけど」
 
「そうなんだ」
 
「この後に『POINT STONE』を入れても良かったんだけど、全曲聞いて最後に入れるか…?って。『POINT STONE』ではハッキリ言って軽いなと思った」
 
「最後に聞き取れる、聞かせる曲を持ってきたのはいいね」
 
「この"無意識に眠っている"も無意識に言ってるんですよ。無意識っていうワードを考えながら作っているから無意識ってワードも出てくるわけじゃない。だからハンバーガーを食べながらハンバーガーの曲作っていてハンバーガーの歌詞が…チーズバーガーとか歌詞に出てくるのと同じようなことですよ。たぶんそんなこと」
 
「これは印象的な曲だよね。"本の文字の中を散歩 本の中の文字の中で迷う"というところも気になる
 
「小説とか読んでて「こいつとこいつ誰だっけ…?」ってなることない?」
 
「あるある」
 
「そういう意味 笑
外国の小説とか特にそうなんだけど、『シュナイダー』と『ケント』とか書いてあってさ、誰だよコイツ…って」
 
「最初の"明かりに照らされる 誰もいないステージの上"っていうのはどういうイメージ?」
 
「現代演劇で暗転からパッと明るくなった時に誰も居なかったら変だなって。でもお客さんは何か始まるのかなって、何もないから拍手だけ鳴ってるイメージ。小さい演劇小屋のイメージ」
 
"曇り空の中を散歩
曇り空の中で笑顔
曇り空の中で散歩
曇り空の中を続く"
 
「自分が散歩する時って曇り空が多いなと思って。そんな天気のいい日に散歩ってしなくない?」
 
「そんなこともないような気がするけど…」
 
「天気のいい日に散歩するより曇り空の中を歩いてるのがなんか好き」
 
「最後の歌詞も気になったんだけど俺はこの辺が特に気になる」
 
"根も葉もない噂
踊らされる民衆の声
続かないものと
移り変わる趣味のそれぞれ"
 
「周りがみんなそうじゃない。だから単純にそう思ったんだと思います」
 
「こういうことに対して怒ってるのかなって」
 
「怒ってはいないけどお前ら本当にそういうの好きだなって感じ。根も葉もない噂にさああだこうだって言ってる割に次に大きいニュースあったらそっちに移ってるでしょ。そういうことですよ」
 
dizさんもそういうこと言ってたなあ」
 
「この人のおかげなんですよ。要するにlo-fiっていうかね。だから『高かろう悪かろう』みたいなのはやめようぜっていう。」
 
「『ネロリの丘』ってタイトルなんだけど、最初は『畑』だったよね。そこから『庭』→『丘』とタイトルが変わっていったけど最終的になぜ『丘』になったの?」
 
「畑だと所有地じゃない?庭だともっと所有地。どっちかと言うとこれって栽培してるでしょ?誰かが管理してるものって感じがすごくした。小さいスペースだなって感じがしたの。だからオレンジ畑は自分の中ですごい広いイメージがあったのでそれだったら丘くらいデカくないと待てないというか…そこで約束しないと規模として小さすぎるなあって」
 
「ほぼ荒地に近いような放置された場所のような…最初は『ライ麦畑』だったんだよね。ライ麦畑だとサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が連想されるのでやめたの。ベタだなと思って。なにか果物を出したいなと思ってオレンジにして、オレンジだから『ネロリ』だなと」
 
ネロリは天然の精神安定剤とも言われているよね。だからこのタイトルを見た時、このアルバム全体に対しての癒しなのかなと思った」
 
「どっちかというとそんな優しいものではなくドライなんですよ。
"お前は本当は一人になりたかったんだろう"
っていうのは人と居るのはうざったいだろっていうこと。約束してるけど結局一人の方が楽だよねっていう。
 
「そんな感じだね。全部抽象的だからね笑」
 
-その後
 
 
 
シャンティブックスさんにもご挨拶に行きました
 
 
 
  
-聞いた人-
ヱスケー
2010年に地元の友人mgmとK.H.BROTHERSを結成。現在はdiz、メガネが加入し4人での活動に
今年MC松島主宰の音楽レーベル トウキョウトガリネズミに加入。今年1月にアルバム『気持ちをちぎって捨てたくなる』をリリースした。
 
-聞かれた人-
シロシビンズ
北海道の音楽家、タブラ奏者。
2010年にバンドとして活動開始。現在はバンド名「シロシビンズ」を個人名にしイラストや漫画、デザインまでその全てを独自のセンスで制作。様々なジャンルに精通し唯一無二の作品を作り続けている。ヱスケーとは大学時代にtamadrowを通じて知り合い 以来度々活動を共にする。休止していた音楽活動を再開させアルバム『無意識ノイズ』を完成させた
 
 
シロシビンズ『無意識ノイズ』